珈琲抽出理論-3. ハンドドリップの濃度は粒度(メッシュ)で決める。

コーヒー豆の粒度(メッシュ)と美味しさの濃密な関係

ハンドドリップをするときにまず行うことは、グラインダーでコーヒー豆を挽くこと。

フィルターやエアロプレス、フレンチプレス、ネルドリップなど、レシピや抽出方法によって最適な粒度(メッシュ)は変わってきます。実はこの粒度、味わいに非常に大きな影響を与えます。

ハンドドリップをご自身のお店で行う際、この粒度(メッシュ)とコーヒーへの味わいの影響を理論的に把握することができれば、

・焙煎度合や特性の異なるコーヒー豆ごとの最適な味わいを引き出す粒度(メッシュ)がわかる

・季節の移り変わりによる室温の変化など、環境や状況にも柔軟に対応できる

・新しいレシピやアレンジメニュー、シグネイチャードリンクの考案

などなど、さまざまな場面で役立ちます。それほどハンドドリップでの粒度は大切な要素なのです。

 

コーヒー豆の粒度は何に影響しているのか

コーヒーギークでは、コーヒーの美味しさに対して粒度が最も大きな影響を与えているのは “濃度” である、と考えています。

そもそもコーヒー豆の内部にはハニカム構造と呼ばれるように、小さな部屋がたくさんあります。コーヒーの生豆は焙煎によって内部に化学変化が起こり、徐々に膨らんでいきます。膨らんだ際、内部に小さな空間がたくさんできるのです。

出典:http://d.hatena.ne.jp/coffees_for_healthy_life/20130821

この小さな部屋の壁面や内部にコーヒーの成分(水溶性の)が付着しており、お湯に触れることで外側へ溶け出していくのです。お湯が内部まで浸透することで、成分が溶け出すのです。

粒度が細かいほどお湯が内部まで素早く浸透して成分が抽出されますが、粗いほど浸透に時間がかかります。つまり、粒度によって時間当たりの成分の抽出量(抽出効率)が変化してくるのです。同じ条件でハンドドリップをした時、粒度が細かいほど抽出効率が良くなり、濃度が高くなる。粗ければ、濃度が薄くなります。

検証実験: 粒度と濃度の関係性について

粒度が変わると濃度がどのように変化するのか、検証実験を行いました。実験内容は下記の通りです。

・使用したコーヒー豆:UNLIMITED COFFEE ROASTERS, Colombia Los Naranjos 

・使用したドリッパー:カリタウェーブドリッパー

・湯温:93度、注湯方法もすべて同じ、粒度のみを変更して抽出時間のコントロールは行わなかった

このグラフは粒度の違いに伴う濃度の変化を実験により検証した結果です。グラインダーはカリタのNEXT Gを使用。濃度の変化が見て取れます。

粒度の違いと濃度の関係性

中細挽きで最適な濃度が抽出されるレシピを組んでいます。粒度を粗くするほど濃度が低くなります。粗い粒度だと湯抜けも良くなるため、抽出時間も短い結果となりました。

スーパーで売ってる粗いザラメよりも、細かいグラニュー糖の方が早く溶けますが、それと似たようなイメージです。

では、この粒度、さらに詳しく解説します。

 

ハンドドリップの粒度で成分の総抽出量が変化する

濃度が変化するとはどういう事か、より詳しく見ていきます。粒度の変化で濃度が変わることはわかったけれど、じゃあどうすればいいか?解説します。下のグラフを見てください。

エチオピア イルガチェフェ フルシティローストに含まれる成分のイメージ

コーヒーに元から含まれている成分を「酸味」「苦味」「甘味」「雑味」「質感」の5種類で分類し、青い棒グラフの高さはそのコーヒーに含まれているそれぞれの成分量を表しています。それぞれの味わいの要素を実際に測定できたわけではないので、あくまでイメージです。が、粒度の違いに伴う味わいの変化をテイスティングし、検証した結果をまとめています。

粒度ごとで横線を引いて、抽出される成分量を可視化しています。各横線が下限値となります。粒度が細かいほど下限値が下がっていき、下限値よりも上の成分量が抽出されていることになります。例えば、粗挽きであれば、その横線を下限(ゼロ)として、酸味と苦味、質感の元となる成分が抽出されるが雑味と甘みはほとんど感じられない、といったイメージです。(わかりにくいですよね・・・。)

酸味や苦味は比較的抽出されやすい成分ですので、濃度が薄い粗挽きでも感じることができます。一方、甘味や雑味は抽出に時間がかかるため、粗挽きでは成分量が少ないです。同じ条件下でハンドドリップをした際、粗挽きでは成分の抽出効率が悪いため、横線は上の方。粒度が細かいほど横線が下へと下がっていき、各成分量が多くなっていきます。

ここで注目して欲しいのは、「適正濃度が抽出される粒度」「雑味が抽出されやすい粒度」です。

粒度が細かいほど、成分の総抽出量が多くなります。粗いと雑味の抽出がほとんどありませんが、濃度が薄いため味わいの質は悪い。一方、細くしていくほど成分抽出量は多くなり、ある点から濃度が濃くなり雑味が目立ち始めます。いわゆる過抽出の状態です。

ハンドドリップで見極めるべき最適な粒度は、適正な濃度が抽出され始める粒度〜雑味が抽出されてしまう粒度までの範囲です。この範囲の粒度がわかれば、常に適正な濃度でコーヒーを抽出できます。さらに、どこまでの粒度であれば品質に問題がないか、も把握できます。←ここがとっても大切。

冬と夏、季節を通して室温は変わります。これによってコーヒー豆の抽出効率は変化してきます。室温が高ければ成分の出が良くなり、低ければ悪くなります。上記のような安全な粒度の範囲がわかれば、濃度に関しての調整であれば、十分な調整ができます。エスプレッソであれば、この調整はよりシビアになりますね。

いま使っているグラインダーで、どれくらいの粒度の変化でどのように濃度と味わいが変化するのか、抑える事が非常に重要なのです。この感覚をつかめれば、濃度のコントロールはバッチリです。さまざまな場面で応用が効きます。

 

次回は「適正な濃度はどれくらいか?」について解説します。