珈琲抽出理論-8. ハンドドリップの味わいを抽出時間で決める

コーヒーと抽出時間の美味しい関係

ハンドドリップの味わいを左右する重要な要素のひとつが『抽出時間』です。蒸らしから抽出終了までの時間のことで、成分の抽出に大きく影響します。この抽出時間を理論的に把握できれば、

『酸味、苦味、甘味、雑味といった、コーヒーの香味バランスをコントロールできる』

ようになります。コーヒー抽出の味作りにおいて重要なポイントです。まずは、なぜ重要なのか、その理由からご紹介します。

 

時間の経過によって抽出成分が変化する

以前、蒸らしの重要性についてご紹介した記事で抽出時間の延長にともなって濃度が高くなることを、検証実験で明らかにしました。

抽出時間が味作りに大きく影響するもうひとつの理由は『時間の経過によって、抽出される成分が変化する』からです。コーヒーギークでは、抽出時間と成分の関係を調べるために以下のような検証実験を行いました。

検証実験:時間と抽出成分の関係性

《実験方法》

注湯を80g、50g、50g、50gの全4回に分けて行い、各注湯時に落下した抽出液をそれぞれサンプリングした。抽出液は濃度の測定を行い、味覚評価を行った。注湯回数を重ねるごとに抽出時間が経過していくため、時系列での濃度と味覚の評価が可能となる。

《実験レシピ》

コーヒー豆の量:15g、総湯量:225g、湯温:90度、粒度:中細挽き

堀口珈琲#3番ブレンド(シティロースト)を使用。酸質とロースト感のバランスが良く、本実験に最適だと考えました。

検証結果と考察

抽出時間ごとの味わいの変化をテイスティングした結果、以下のことが分かった。

  1. 酸質は抽出初期にほとんどが抽出され、その後の抽出量は減少する。
  2. 苦味は抽出初期にその多くが抽出され、その後も抽出が続いていく。
  3. 甘味は抽出時間に比例して、抽出初期から後期にかけて長時間抽出される。
  4. 雑味は抽出の後期に多くが抽出され、一定時間を過ぎると多く感じられる。
  5. 濃度は注湯回数を経るごとに減少した。

全4回に分けて注湯し、サンプリングしたコーヒーをそれぞれ酸味・苦味・甘み・雑味の4項目で評価しそれぞれの強さを時系列とともに視覚化してみました。

抽出初期は酸質が多く抽出され、その他要素も感じ取ることができます。雑味はほとんど感じられません。その後酸質の抽出は徐々に少なくなり、ある時点で感じられなくなります。苦みは抽出時間をに伴って強くなる傾向がみられ、抽出後半でも良く感じることができます。甘味も時間に伴って抽出される傾向を持ちます。

一方雑味は、抽出後半で顕著に感じられるようになります。抽出時間が長すぎると雑味が多くなることも、検証結果からも明らかでした。

ここでのポイントは、雑味が抽出される前に欲しい成分の抽出を終わらせ、香味バランスを整えてしまうことです。そうすることで過抽出による雑味をなくし、クリーンかつコーヒー本来のキャラクターが表現されたカップを作ります。

 

濃度については、注湯回数に伴って減少していく傾向がありました。抽出の前半でコーヒーの成分はほとんど抽出されており、後半は濃度も薄く水っぽい印象です。抽出の後半は濃度の調節の役割がある、と言いますが、この検証結果からもそれを説明することができました。

濃度測定結果。注湯回数を追うごとに濃度が減少している。

 

時間と成分抽出の傾向から味わいをコントロールする方法

これらの成分の抽出傾向を見ながら、味わいコントロールする事が可能です。

酸質や苦味、甘味、雑味、それぞれの成分が特に抽出されやすいポイントで抽出効率を高めたり、反対に抑えたりすればいいのです。

ピンポイントで抽出効率を高めるには、①湯温を高くする ②撹拌する 。逆に抑える場合は、①湯温を下げる ②そっと注湯する 方法があります。粒度を粗挽きにすることで、初めから抽出効率を抑える方法もあります。

例えば浅煎りのコーヒーを抽出する場合、よりフレーバーの豊かな酸質とコーヒー本来の甘さを引き出したいとします。その場合、

①酸質がよく抽出される抽出初期の湯温を高く設定する

②雑味が抽出されやすい抽出後期の湯温を下げて注湯する

初めは高い湯温で抽出効率を高め、必要な酸質を引き出します。雑味が抽出されやすい後半は低温のお湯、または常温の水を使用することで抽出効率を下げ、クリーンな印象を引き出します。また、甘味は低温でも比較的抽出されやすいため、湯温を下げる事で雑味を抑えながら甘味の印象を強くする事が可能です。

この抽出理論を用いて考案された抽出方法が『二段階抽出』です。二段階抽出とは、2016年のJapan Brewers Cup で多くのバリスタが使用した、抽出の前半と後半で抽出効率をコントロールする方法です。

このように、抽出理論を抑えることで新しい抽出方法を考案しより良いコーヒーを作り出すこともできるのです。ぜひ、ここに書いた検証方法をご自身でやってみてください。普段のコーヒー抽出、ハンドドリップがより一層楽しくなります!

 

とういうことで次回は、この二段階抽出を徹底解説します!